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2006年第2回定例会-あぜ上三和子議員

  1. 教育について
  2. 障害者自立支援法問題と本区のとりくみについて
  3. 若者の雇用問題について

 第一の質問は教育についてです。
 まず教育基本法改正問題について伺います。今国会に提出されている教育基本法改正法案の論戦を通じて明らかになったことは、この「改正」は教育の範疇にとどまらず、日本の存在の根本をも変えようとする極めて重大な内容だということです。
 そもそも現行教育基本法は、日本が引き起こした侵略戦争を深く反省し、二度と戦争はしないと世界に誓った憲法と一体につくられました。戦前、教育は国家権力の強い統制・支配下におかれ、画一的な教育が押し付けられ、やがて軍国主義一色に染め上げられていった歴史の教訓にたってつくられたのです。法の目的を「人格の完成」とし、そのために教育は国民に直接責任を負うこと、政府は教育の中身に口を出さないこと、教育行政の仕事は教育条件の整備をしっかりやること、教員は国民全体に責任を持って教育に携わることを大原則にしました。政府の「改正」案は、この教育基本法の大原則を百八十度変えて、これからの教育は政府が決めた法律どおりに行なう、政府が教育の中身を決めてすすめるなどとして、国家が公然と教育内容に介入し、子どもや国民に指示・命令し従わせる教育にしてしまおうという、まさに「お国のため」の人づくりを進めようという大改悪です。
 国が天下御免で教育内容に介入することを絶対許してはならないと思いますが、区教育委員会の見解をまず伺います。
教育への国家介入の歯止めをなくして、やろうとしていることの一つは「愛国心」など「徳目」の押しつけです。
 すでに東京では都知事が「憲法は認めない」と公言し、教育委員が「東京都は独自に教育基本法を改正した」といって、都立学校において教育委員会指導で「君が代」を歌わない先生を処分する、さらに「君が代」を歌わなかった生徒が多いクラスの先生を処分するという無法な強制をエスカレートさせ、江東区の教育委員会にまで指導の徹底を通知してきています。
 また福岡や埼玉などでは通知表で「愛国心」をABCと評価していたことが国会で大問題になりました。
 愛国心の通信簿も、「君が代・日の丸」の強制も2002年に始まった新学習指導要領に「国を愛する心を育てる」ということが書き込まれたことがきっかけですが、その学習指導要領に書いてある「徳目」を今度は法律に格上げし子ども達の「愛国心」を学校で評価し態度を強制する、心まで強制されては「人格の完成」どころか「人格の破壊」であり、内心の自由を踏みにじる憲法違反ではありませんか。
 この間の国会論戦で「内心を通知表で評価することは不適切」と文部科学相も答弁せざるをえなくなっていますが、そもそも市民道徳は「人格の完成」をめざす教育のなかで培われるものであって、けっして法律で強制するものではないと思いますが、区教委の見解を伺います。
 今ひとつ重大なのは改正案に、教育内容にまで立ち入った「教育振興基本計画」を盛り込み、小中学校のうちから「勝ち組・負け組」をつくりだす競争と選別の教育をいっそうの強めようとしていることです。
その先取りともいえる東京都の「いっせいテスト」では、子どもの到達度も無視し上からテストで競わせ、しかも足立区など数区で学校の成績順を公表し、学校選択制とセットで行ない学校の序列化を進めて、子ども達のこころを傷つけ、教育現場に混乱と困難をつくりだしています。本区の教育委員会は、テストの学校別公表はしていないものの、この間こうした競争教育の流れを無批判に受け入れてきたことは厳しく総括されるべきことだと思います。
 これまで歴代政府が教育基本法の理念に逆行する「競争と詰め込みの教育」を押し付けてきましたが、この日本の異常な競争教育は、国連の子ども権利委員会から二度もきびしい批判の勧告を受けてきました。この反省と見直しこそすれ、いっそう子ども達を競争に追い立て、格差社会をつくりだした弱肉強食の競争原理をそのまま教育にもちこむなど、とんでもありません。
 区教育委員会は、江東区の子ども達の教育に直接責任を負う代表機関として、大事な子どもたちの未来を閉ざす改正案の撤回を国に強く求めるべきだと思いますが、伺います。
 いま教育行政に必要なことは、教育現場に寄り添い、現場の声を聞き、きめ細かな教育を推進する教育条件の整備です。
義務教育の国庫負担を削減し、教職員の定数改善を見送り、教育条件の整備を行なうべき国の責任を地方自治体に押し付けている現状こそ変えるべきではないでしょうか。国に対し三十人学級の早期実現など教育条件整備を求めるべきと思いますが、あらためて区教育委員会の見解を伺います。
 第二の質問は、障害者自立支援法問題と本区のとりくみについてです。
 4月から障害者自立支援法が施行となりました。
 昨年第2回定例会で区は「支えあう仕組みの強化のためには定率負担の導入はやむをえない」と答弁していましたが、実態は障害者と家族、そして関係者の不安と大混乱は計り知れないほど深刻です。
 今年に入って先行きが見えなくなったと母親が無理心中を図って障害者の娘を殺害する、家族にこれ以上負担をかけたくないと重度の身体障害者が自殺するなど痛ましい事件が全国でおこっています。東京都社会福祉協議会などの調査結果でも法施行に伴う最も顕著な影響は施設の退所。私のところにも障害者の家族の方から「施設の退所を考えざるを得ない」と相談が寄せられました。
 区内のある通所授産施設にかよう障害者は一割負担で月一万七千円の利用料負担になるのに、懸命に働いて手にした工賃月八千円。「仕事をしても利用料も稼げない」という声をあげています。またグループホームから授産施設へ通っているがいままで月七万二千円の負担が月十万円をこえてしまい障害年金だけでは生きていけなくなってしまったなど、新たな負担が強いられ自立支援どころか弱いものいじめとしか言いようがない現実です。区は、これでも「やむをえない」というのでしょうか、こうした実態と声をどう受け止めているのか、まず伺います。 
 区は、重度の障害者に対する負担軽減策をつくりましたが、軽減される人は五十人のみ。荒川区などでは「いままで利用者負担がほとんど無料であることを踏まえると、国および都の利用者負担軽減策だけでは家計に与える影響はきわめて大きい」として独自に利用料負担を3%に軽減するなどの軽減策を講じています。多くの障害者と家族が苦しんでいるとき暮らしの防波堤になって生活と権利を守るのは自治体の責務ではありませんか。せめて荒川区のような利用者負担の軽減を実施し、少なくともすでに十二区で実施している通所施設の食費負担軽減策を早急に実施すべきではありませんか、伺います。
 障害者にこんな負担を強いたのは、利用料は能力に応じて負担するというこれまでの応能負担の原則を変え、利用したサービス量に応じて負担する応益負担としたからです。障害者が人間として当たり前の生活をするために必要な支援を「益」とみなして負担を課すやり方では障害が重ければ重いほど負担が重くなり、福祉をあきらめざるを得ない、まさに生存権をも否定する制度だといわざるを得ません。「問題があれば見直す」と首相は国会答弁しています。
区は、国に対し応益負担の撤回を求めるべきですではありませんか、伺います。
 法施行によって、通所施設などの収入減と経営そのものがたちゆかなくなってしまうという大問題も浮上しています。
 国は施設の報酬をこれまでの「月払い方式」から「日払い方式」に変え、その報酬額を不当に抑制しました。「日払い方式」は利用者の出席日数による実績払い。障害者は体調が悪くなることも多く、とりわけひきこもりやすいなどの精神疾患をもつ人など通所施設を利用していても毎日通えるとは限りません。 
 区内の施設に伺うと、「昨年度実績から約二割の収入減。正規九人とパート三人で四十人のケアをしていたが、三人の正規職員をリストラしないと経営できない。そうなったら施設の存続すらできなくなって、障害者の行き場を奪うことになる」と頭を抱えていました。
 区として施設存続のための新たな補助制度を検討し、同時に国に対し日払い報酬の撤回を求めるべきです。区の見解を伺います。
法施行に当たっての説明では、サービスが選択できるとしていますが、実際には生活施設は選択できるどころか東大に入るより難しいと言われるほど不足しています。区内にできた重症心身障害者施設も空きの見通しはなく、さらに入所更生施設は区内にひとつもありません。「自分が死んだらどうなるのか」家族は大きな不安を抱え悩んでいます。入所施設の早急な建設を求めますが、伺います。
 第三の質問は、若者の雇用問題です。
 所得格差がいま大きな社会問題となっていますが、中でも若年層での格差の広がりは深刻です。若者の失業率が他の世代の二倍にもなっているだけでなく、派遣、パート、契約など非正規雇用が急増、二十四歳以下では二人に一人にまでなっています。区は「就業形態の多様化は企業と労働者双方に要因がある」という認識でしたが、直近の都産業労働局の調査では20代の若者が不安定雇用についた最も多い理由に「正規の仕事が見つからなかった」ことをあげているように、多くの若者は生活の安定を求め正規で働くことを望んでいるのです。
 いつ仕事がなくなるかわからない不安とともに働きながらその多くが十万円代などの低賃金の非正規雇用の若者たち。
若者が経済的に自立できない雇用の広がりは、少子化問題や社会保障制度の空洞化をはじめ、親の世代にも大きな負担と不安を引き起こしています。この問題は、江東区の未来にとっても重大な問題だと思いますが、区の認識をまず伺います。 
 会社の利益のためだけに、正規雇用から非正規雇用へおきかえ大規模なリストラを進めた大企業の社会的責任と、「構造改革」の名のもとに労働法制の規制緩和で安上がり雇用を増大させた小泉内閣の責任は重大といわなければなりません。しかも今国会では、この公務員版として行革関連法案を強行可決してしまいました。
 いま改めて区としての雇用責任が問われます。区はこの間、この行革関連法案の先取りのごとく、人員削減まずありきでリストラを押し進めてきました。定員適正化計画を策定し、区の職員を削り、非常勤化や民間委託を促進。今年も23区の中で最も削減率が高い職員142人も削減してしまいました。その結果、例えば児童課の職員は正規職員147人に対し非常勤と臨時職員は164人と正規職員を超えています。非常勤職員は「同じ仕事をしているのになぜ年収は半分なのか。これでは生活が成り立たない。賃金など均等待遇にしてほしい」と切実な声を上げています。
 区民サービスの向上・質の確保からも労働条件の改善は避けて通れない問題です。厚生労働省の「パートタイム労働研究会」の最終報告は、問題の多い報告ではありましたが、その報告でさえ目安として「正規の八割待遇」を示しているのに、その目安さえ満たしていない事態を区はどう改善するつもりなのでしょうか、伺います。
 正規職員の実態はどうでしょうか。職員削減と不安定雇用依存の中で、正規職員の年齢構成をみると二十代は220人、全職員のたった7%。団塊の世代が退職したら、今まで培われてきた住民の福祉を守る行政の大事な仕事の技術や技能・公務の継続ができるのでしょうか。直ちに必要な正規職員を増やすべきではありませんか、伺います。
 いまや地域振興会、スポーツ公社、社会福祉協議会では常勤職員215人に対し非常勤職員は133人にのぼっています。「本来なら正規職員として働き続けたい」こうした若い非常勤職員の声を理事長である区長はどう受けとめているのですか。区民の教育権、福祉の権利を保障する設置目的をはたすためにも、改善すべきではありませんか。伺います。
 昨年度、区は若者の職業体験事業・インターンシップ事業をスタートしましたが、就職に結び付けるには程遠いのが実態です。台東区では、商工会議所との共催で就職面接会など行ない、江戸川区では、労働相談情報センターと共催でフリーターの人を対象とした若者自立塾など行ないます。若者の仕事確保には、働くルールの周知や就職相談などいろいろな形での支援が必要で、本区としても就職相談会や自立塾など積極的にとりくみ若者の仕事確保に力を尽くすべきと考えますが、伺います。 
 亀戸の労働相談情報センターに伺ったところ、相談のトップは解雇問題でした。長時間労働で体を壊し入院したら社長が病院に来て「使い物にならない」と解雇された、残業ができないと言ったら「正社員からパートにする」と賃金を三分の一にされたなど、若者を「使い捨て」にする理不尽な解雇や非正規職員に対する差別や格差は、あとをたちません。江東区では大手企業や事業所も増えていることから、若者が気軽に労働相談ができ、泣き寝入りすることのないようにする必要があると考えます。本区として労働相談情報センターと連携しての若者労働講座や労働相談窓口を開設することを提案し答弁を求め、私の質問を終わります。

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