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2007年第3回定例会-きくち幸江議員(保育 教育 学力テスト 学校選択性)

  1. 保育問題について
  2. 保育料について
  3. 教育問題について
  4. 全国一斉学力テストについて
  5. 学校選択制度について

 第1は、保育問題についてです。
 保育園に入れない状況が依然として深刻で、来年度の募集を目前に、父母の不安が高まっています。待機児の解消について、区は昨年12月作成の総合実施計画では、「平成21年度までに待機児をゼロにする」としていました。しかし、今年度4月の待機児数は113人減る計画に対し、実際は97人ふえ、既に210人も計画に違いが出ています。認証や無認可などからの転園希望も含む旧定義でも784人と、昨年より大幅にふえました。計画では今後平成21年度までに新設園4園、改修2園で待機児を解消することになっていますが、そのうち3園は大規模マンション建設によるものです。新たな保育需要を伴いますから、これでは待機児はなくなりません。待機児をなくす計画を抜本的に見直す必要があると思いますが、まず伺います。
 そもそも待機児解消を言いながら、一向になくならないのは、行政の姿勢に問題があります。マンション建設急増で、保育園が足りなくなることが十分予測される中で、辰巳第一保育園を閉園、その後も「認証保育や民間マンション建設時に」と認可保育園の整備に及び腰で、待機児をふやし続けてきました。我が党が行った区民アンケートでは、「マンション寄附金を取っているのに保育園に入れないのは詐欺だ」との意見も寄せられています。昨年、ようやく「土地を買ってでもつくる」との決意が表明されましたが、まだまだ甘い計画です。閉園後そのまま空いている辰巳第一保育園の場所の活用、区有施設を利用予定の南砂地区では、早期完成を目指して園庭の確保できる場所に計画を見直すこと、マンション建設がストップしている白河地区や、建設年度が遅い亀戸地区など、マンション建設に伴う地域では、新たに土地、施設を確保して直ちに整備することを求めます。見解を伺います。
 次に、保育園の民間委託についてです。
 この8月、新たに2園の民間委託の計画が示されました。我が党はこれまで、経費削減の委託では人件費を切り下げざるを得ず、保育の質の低下につながること、保育者が全員変わることにより子どもが精神的に不安定になるなど、子どもたちの成長にとってもマイナスであることを指摘して、民間委託をやめるよう求めてきました。乳幼児期の大人との安定した信頼関係を築くことは、子どもの成長にとって何より大切にされなければならないことです。次の委託園とされた亀戸第四保育園の説明会に参加しましたが、父母の皆さんからは、「子どもに負担をかけない委託ができるのか」「区は子どもに最善のことを考えてほしい」「成長の中で問題が出たら区は責任を持てるのか」「子どもたちを守る協力者として、区はその役割を発揮してほしい」など、こういう委託の中止を求める切実な声が相次ぎました。この声にきちんと向き合うべきです。委託された豊洲保育園にも伺いましたが、委託当初は父母の目が厳しく、信頼関係をつくることがとても大変だったとのことです。民間委託は父母と保育士が築き上げた信頼を無理やり断ち切り、子どもの成長を犠牲にするものではありませんか。保育園の民間委託方針の撤回を求めます。見解を伺います。
 豊洲には株式会社が運営する保育園が開所する予定です。利益を上げて株主に配当することを目的とする株式会社が保育事業に参入できるようになったのは規制緩和によるものですが、収益を上げるためには、経費の8割以上を占める人件費を削ることになります。練馬区で委託を受けた株式会社ピジョンの保育園では、わずか3カ月で園長と保育士8人が退職、昨年1年間で26人の保育士が退職したそうです。神戸市では、株式会社ウィッシュ神戸の保育園が、資金繰りが難航し収益が見込めないと保育園を廃園、池袋で子どもの窒息死を起こした「ちびっこ園」は無認可ですが、全国66カ所に保育園をふやし、1975年からの26年間に、事故などで22人の子どもが亡くなっているとのことです。
 区は待機児解消策として株式会社の保育所設置を掲げましたが、とんでもありません。これまで民間委託に当たっても、「社会福祉法人だから保育内容は落とさない」と繰り返してきたのは、株式会社の保育園運営に問題が多いことを認識しているからではありませんか。江東区の子どもたちの安全と成長にかかわる問題です。区内への株式会社の保育参入は許さない立場を貫くべきです。見解を求めます。
 次に、保育料についてです。
 今議会に保育料値上げの条例案が提案されました。これまで我が党が繰り返し求めてきた第2子減免の拡充、第3子の無料化については評価しますが、基準保育料の17%もの値上げは、子育て支援を投げ捨てるのかというような暴挙です。せっかく第2子減免を10%ふやしても、平均世帯で6.5%の値上げ、第3子は今年度で57人ということですから、ほとんどの世帯が値上げになります。これまで無料であった住民税非課税世帯にまで新たに負担を求めるとは、子どもを産むなと言うに等しいものです。
 区は子育て世代の生活実態をどう認識していますか。厚生労働省の調査では、児童のいる世帯の平均所得は、この10年間に63万円も減っています。「生活が苦しい」と6割の人が答えています。また、就学前の子どもを持つ親の7割近くが、子育て費用が負担だと感じ、その中でも、保育園や幼稚園にかかる費用が負担であると答えた親が8割です。保育料を10年間変えていないと言いますが、保育料は応能負担ですから、収入が上がれば保育料も上がっています。定率減税の全廃で実収入が減っているところに保育料値上げでは、子育ての負担はふえるばかりです。区は定率減税の全廃で23億円の増収、住民税フラット化では57億円の増収を見込んでいます。保育料値上げによる増収見込みは、1億6,570万円とのことですから、住民税増収分の一部を充てれば保育料の値上げはしなくても済みます。保育料値上げの撤回を求めます。
 また、認証、無認可保育施設などの高い保育料の負担軽減の拡充を求めます。いかがですか、見解を伺います。
 次の質問は、東京オリンピック招致活動についてです。
 我が党は、東京オリンピック招致の目的がゆがんでいると指摘してきました。区長は「子どもたちに夢と勇気と感動を」「スポーツ振興の強化、青少年の育成に寄与する」と言いますが、東京都の作成したオリンピックの基本方針でも、そうした記述はほんのわずかで、ほとんどはまちづくりの課題、「21世紀のまちづくり」「オリンピックをてこに都市と社会を変革」「3環状等の道路整備を加速させる」などと並べ立てられていることからも、開発に重点の置かれた計画と言わざるを得ません。区長が東京オリンピックを盛り上げると協力要請してきた東京五輪音頭の盆踊りでは、始まる前に曲をかけただけとか、実施についての区からの問い合わせに「点検された」と戸惑う声も聞かれ、任意団体である町会組織への行政の不当介入となりかねない状況も生まれています。また、6月の記者会見では、「招致活動に税金は使わない」と明言していましたが、庁内に東京オリンピック招致の担当課長、庁内連絡会を置き、予算もないうちから五輪音頭のCD250枚を購入、補正予算で299万円を計上していることは、区民に対する約束違反です。区長のトップダウンで職員を動員し、税金を使ってまで上から押しつけるような招致運動は改めるべきではありませんか。伺います。
 慌ててつくったオリンピックの計画も無理が出ています。メーン競技場は、結局、「晴海で新設」となったようですが、当初予定した国立にはならず、都財政の持ち出しが見込まれます。ビッグサイトに仮設する予定の水泳会場は重量制限があり、新たな施設が必要に。有明テニスコートは面数が足りない、浜離宮でのトライアスロンは水質改善が必要、アーチェリー会場は夢の島公園をほとんどつぶすほどの施設の新設が必要。交通アクセスでも計画されている環状道路などのほかに、三方を海に囲まれたメーン会場への新交通網、地震に備えての液状化対策など、次々と問題が明らかになっています。有明北地区に予定されている選手村も低層でないとだめとの指摘を受けて、当初予定の民間資金が難しくなっています。税負担はどこまで膨れ上がるのか、本当にこれで実施できるのかという状況ですが、区長はこれらの問題をどう考えておられますか、伺います。
 私たち区議団が行った区民アンケートでは、「来ない確率が高いのなら最初からむだ遣いはやめてほしい」「区民の生活の現場を歩いてみてほしい」「オリンピックに浮かれている時ではない」など開発に反対する意見が8割を占めました。オリンピックという看板だけで夢を見るほど区民の生活は楽ではありません。保育や医療、介護、住宅、雇用、営業、どの分野も深刻で、明日の生活の見通しも立たない人がふえているのです。行政課題は山積しています。区長は「オリンピックより暮らしの応援を」という区民の声をどう受けとめますか。見解を伺います。
 次に、教育問題について伺います。
 改悪された教育基本法を具体化する教育三法が、さきの国会で強行可決されました。義務教育の目標に「国と郷土を愛する心」などを加え、また、小中学校に統括校長、主幹教諭などの新たな職を置いて階層化を進め、教員免許には10年の有効期限を導入、自治体の教育委員会に対する文部科学省の権限を強めるなど、特定の価値観を子どもたちに押しつけ、上意下達、教育への権力統制を具体化するものです。
 この法改定に対し、東京新聞は「修身復活は御免だ」「現場を委縮させるな」「教育再生には管理強化よりも現場への人や予算の手当を」と報道しました。毎日新聞も「威圧の法にしてはいけない」、沖縄タイムスは「公教育に国家や政治家の個人的な考えを持ち込むもの」などの批判的論評を行っています。教育は子どもとの信頼関係を基礎とした文化的な営みであり、法改定による権力統制の強化は国民の思想・信条の自由、教育の自主性を保障した憲法の原則を脅かすものと考えますが、区教育委員会の見解を伺います。
 区教委は、先月、早速、統括校長、主任教諭の2職種を新たに設置、教員の職層を現行の4段階から6段階にふやし、給与にも差をつける規則改定を行っています。「特に重要かつ困難な職責を担う校長」「高度の知識または経験を必要とする教諭の職」とそれぞれ規定されていますが、だれが何を基準に評価するのかは全くあいまいです。結局、教育委員会に都合のよい校長、校長の言うことを聞く教諭が評価されるとなれば、目線が子どもたちより上を向くことになります。教員の力量向上は極めて大切な課題ですが、学校教職員一致協力して子どもに向き合う日常の教育活動の中でこそはぐくまれるもので、校長を初め教員が上を向いて競い合っていては、教育の目的は果たせません。統括校長、主任教諭の導入の撤回を求めます。見解を伺います。
 次に、全国一斉学力テストについてです。
 ことし4月、中学3年生、小学6年生の全生徒を対象に行われました。区教委は、「学校における学力向上と授業の改善に活用する」と一斉テストの実施を肯定してきましたが、クラスで行うテストと違って、答案用紙はすぐには本人の元に返らず、生徒個人の学力向上にはつながりません。4年前、都のテストで最下位であった足立区が、点数を上げようとして区独自の一斉テストを実施し、点数を公表、上位校には予算を多くするという方針まで打ち出して点数競争に走ったことが、校長を初め教員が指差しで教える、知的障害の子どもの答案を抜き取るなどの不正につながりました。点数競争で学校や自治体を序列化すれば、こうした事態が全国の自治体に広がることは明らかです。一斉テストに参加しなかった犬山市は、「教育への競争原理の持ち込みと子どもたちの豊かな人間関係の土台づくりは両立しない」と主張して注目を浴びています。区教委として、全国及び東京都の一斉テストの中止を求めるとともに、区としての不参加を表明すべきです。
 また、結果の公表について、これまで各学校に任せるとしてきましたが、点数がよい学校は公表しても、悪いところは公表できません。各学校を集めれば、おのずと序列化につながります。学校での点数の公表をやめさせるべきと思いますが、見解を伺います。
 次に、学校選択制度についてです。
 「特色ある学校づくり」の名のもとに学校同士を競わせてきました。実施6年目を迎えて、生徒の半数以上が学区域外の生徒となる学校もあらわれて、地域とのつながりが薄れ、学校規模の差が顕著になっています。区教委は、学校規模の広がりは選択制以外の要因もあるとしていますが、卒業式や入学式の挨拶では、「入学生が多くてよかった」とか「少なくても頑張ろう」などと生徒の数で学校を評価することが当たり前になり、生徒自身も「人数が多くてよい学校」「少なければだめな学校なのか」という意識を持たせられています。小規模校では、「学校がなくなるのではないか」という言葉が日常的に交わされている現状をどう受けとめますか。学力テストの結果が口ざたされるようになれば、点数競争の加速にもつながります。義務教育の役割は、子どもたち一人ひとり、どの子にも必要な知識を身につけさせ、人としての成長を保障することにあります。学校選択制度は見直し、学校と保護者、地域の力で進める学校づくりに戻るべきです。見解を伺います。
 今、一番の問題は、「競争原理」を教育に持ち込み、さらに強化しようとしていることです。日本政府は過去2回、国連の子どもの権利委員会から「高度に競争的な教育制度」を改めるように勧告を受けていますが、学力テストでは点数競争が小学校にまで持ち込まれます。教員も点数で評価され、学校同士も競争、常にだれかと競争し、だれかをけ落とすことでしか自分の存在を主張できない。これでは教育は成り立ちません。仲間の中で学び合い、励まし合ってこそ自己肯定感が生まれ、学力とともに人間性や仲間を大切にする力をはぐくむことができます。他人と比べて自信を失わせたり、人間関係をばらばらにして攻撃的にする競争原理を教育に持ち込むことは、直ちにやめるべきです。伺います。
 我が党はこれまで、不登校やいじめなどの改善、学力向上を図る条件整備として、少人数学級の実施を求めてきました。政府がかたくなに拒む中、東京を除くすべての道府県で実施に足を踏み出し、その効果も報告されています。「個に応じたきめ細かい対応ができるようになった」「学級が落ち着き、情緒が安定した」「学力が向上した」「発言機会がふえ、積極的に授業に参加するようになった」「欠席日数や不登校が減った」などです。区教委が幼小連携教育で解消しようとしている小1プロブレムがなくなったとの報告もあります。学力向上でも生活態度でも効果がはっきりしている少人数学級を直ちに実施するよう、国と都に求めるべきです。伺います。
 生活格差が急速に広がる中で、子どもが安心して学校に通える環境をつくることも緊急に求められています。経済的支援が求められていますが、就学援助について、区は水準の低い5ブロックで比較し、認定率の高さを理由に、現在の生活保護費の1.18倍の基準でよしとしています。子育て世代の生活の現状からも、せめて23区平均まで就学援助の基準を引き上げるべきではありませんか。見解を伺い、質問を終わります。(拍手)

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